英雄たちの探求 . Морган Райс
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Читать онлайн книгу 英雄たちの探求 - Морган Райс страница 5
ソアは兄たちのことを、今彼らがどこにいるのかを考え、腹が立った。馬車で丸1日行けば王の宮廷に到着するだろう。ソアにはそれが見えるようだ。盛大なファンファーレと共に到着し、美しい衣服を身にまとった人々が彼らを迎える。戦士たちも挨拶を返す。シルバー騎士団のメンバーたちだ。彼らは迎え入れられ、リージョンの兵舎内に住む場所を、王の訓練場を、最高の武器を与えられる。それぞれ有名な騎士の見習いとして任命される。いつかは彼ら自身も騎士となり、自分の馬、紋章、そして見習い騎士を持つことになる。祝祭にはすべて参加し、王の食卓で食事をとる。特権を与えられた生活。だが、それはソアの手をすり抜けた。
ソアは気分が悪くなってきたが、それを意識から消し去ろうとした。だができなかった。彼の一部が、どこか深いところで自分に向かって叫んでいた。あきらめるな、もっと素晴らしい運命が用意されているのだ、と彼に言う。それが何かはわからなかったが、ここにないことだけはわかる。ソアは、自分は他の人と違っていると感じていた。特別なのかも知れないとさえ。誰も理解しえない何か。誰もが過小評価している彼の何か。
ソアは最も高い丘に着いたところで羊の群れを見つけた。訓練が行き届いているので、皆ばらばらにならずに、手当たり次第に満足そうに草を食んでいた。羊たちの背中に彼自身がつけた赤い印を探して数を数えた。数え終わった瞬間、凍りついた。1頭足りない。
何度も数えなおした。やはり1頭いない。信じられない思いだった。
ソアは羊を見失ったことなど今まで一度もない。 父はこの償いさえさせないだろう。もっと嫌なのは、羊が荒野に一頭だけで迷い、危険にさらされているということだった。罪のないものが苦しむのは見たくなかった。
ソアは頂上まで走り、はるか遠く、いくつもの丘の向こうの地平線をくまなく探し、見つけた。一頭の、背に赤い印をつけた羊を。群れのなかでも暴れんぼうの羊だ。逃げ出しただけでなく、よりによって西の方角、暗黒の森へ向かったことがわかり、ソアの心は沈んだ。
ソアは息をのんだ。暗黒の森は禁断の場所だ。羊だけでなく、人間にとっても。村境の向こうへは、歩き始めた頃から決して行ってはいけないと知っていた。もちろん行ったことなどない。道もなく、邪悪な動物の住む森に入ることは死を意味すると言い伝えられてきた。
ソアは考えをめぐらしながら暗くなりつつある空を見上げた。自分の羊を行かせるわけにはいかない。素早く動けば、暗くなるまでに連れ戻すことができるかも知れない。
一度だけ後ろを振り返ったのを最後に、ソアは西へ、暗黒の森へと全力で疾走した。空には暗雲が立ち込めている。沈み込む心とは裏腹に、足はどんどん前へ進む。いくらそうしたくても、振り返るものかとソアは思った。悪夢へ向かって走るようだった。
*
ソアは丘も止まることなく走り下り、空が暗く覆われた暗黒の森へと入って行った。森の入り口で道は途切れている。道のない領域へと入って行く。足の下で夏の葉が砕ける音がした。